【Bar Del Sereno Cielo インタビュー】フリーランスでバリスタになるという選択

【Bar Del Sereno Cielo インタビュー】フリーランスでバリスタになるという選択

バリスタの仕事をするにはカフェで働かなければいけない。
そんな固定観念を持っている人はいませんか?
しかし、バリスタの仕事はカフェ以外の場所でもできます。
最近はフリーランスという言葉を聞きますが、
実はバリスタもフリーランスで働くことができるのです。
INTERVIEW BY:Kaori Omi
WRITER BY:Tetsutaro Inoue

バリスタにもフリーランスという道がある

井上:はじめまして。友達からバリスタグランプリで上位に入った方でフリーランスのバリスタとして働いている人がいるという話を聞いて、”バリスタにもフリーランスという道があるのか!”と驚いて、ぜひお話を聞いてみたいと思い、本日はお邪魔しました。

近江:よろしくお願いします。バリスタの仕事をするためにフリーランスになる人が出てきたのは割と最近の話だと思います。フリーランスのバリスタって結構お笑い芸人に似ているところがあって、地方の営業回りみたいなこともしています(笑)

井上:そうなのですね!僕も普段はフリーランスのプログラマーとして働いているので似ているのかもしれません。紹介などでお仕事をもらって、ウェブサイトを作ったら出来高でお金をもらうみたいな感じでやっています。 実際にカプチーノを淹れている様子

IT業界のフリーランスだと僕みたいにウェブサイトやシステムなどを作ったり、ウェブサイトのデザインをしたりする仕事が多い気がしますが、バリスタのフリーランスだとどういったお仕事が多いのですか?

近江:私の場合は、イベントの休憩所みたいなコーナーでエスプレッソを淹れてお客様へ振る舞ったり、コーヒーの体験教室やセミナでエスプレッソドリンクなどの淹れ方を教えたり、催事出店などをしています。

岡山を拠点に活動エリアは日本全国どこでも行っており、現在は東京での仕事が多いですが依頼があれば北海道から沖縄までどこにでもいきます。

井上:僕は素人なので詳しいことはわからないのですが、エスプレッソって作る時にエスプレッソマシンを使うと思うのですが、これってカフェとかに置いてあるかなり大型の機械ですよね。これを持ち運んで日本全国周るのってかなり大変そうな気もするのですが、なんとかなるものなのですか?

近江:案外なんとかなります(笑)エスプレッソマシンにはいくつもの種類や大きさがあるのですが、私は40kgくらいのものを出張する際には使っています。車にエスプレッソマシンを積んで、出店場所まで台車で運ぶこともありますし、あまりにも遠い場合には郵送することもあります。

そのエスプレッソマシンの電圧は100Vなので、家庭用のコンセントと水さえあれば特に問題なく美味しいエスプレッソを作ることができます。

井上:他にもいろいろ機材などあると思いますし、結構筋肉使いそうですね(笑)

エスプレッソの魅力をみんなに伝えるためにフリーランスを選んだ

井上:そもそも何でフリーランスのバリスタになろうと思ったんですか?ITの場合にはコネと人脈さえしっかりと作って腕があれば収入も安定するし、無駄な会議とかに参加しなくてもいいからという理由でフリーをやっている人が多い気がします。あと、スーツも着なくていいし(笑)

近江:私がバリスタをするにあたってフリーランスという道を選んだ理由は、より多くのいろんな人にエスプレッソの魅力を伝えたいと思ったからです。店舗を構えてカフェという形でバリスタになると当たり前ですが店舗に来てくださったお客さんにしかエスプレソを飲んでもらうことができません。 ”今までエスプレッソ自体知らなかった人にもその魅力を伝えることができる”

しかし、フリーランスという形でバリスタになればこちらからイベントなどに出店して、今までエスプレッソ自体知らなかった人にもその魅力を伝えることができます。

井上:確かにフリーランスのバリスタだからこそ、普通の店舗のお客さんとは違った多くの人たちにエスプレッソの魅力を伝えることができそうですね!何か今までバリスタとして面白い経験などありましたか?

近江:愛媛県の山奥にある村に出張でバリスタとしてエスプレッソを淹れに行った時の話なのですが、よく緊急時とかにアナウンスをするためのスピーカーみたいなものあるじゃないですか。あれで今日はバリスタがコーヒーを淹れに来ています!みたいな感じでアナウンスをしてもらいました(笑)

そうしたら村中の方々が参加して下さり、皆様にエスプレッソを飲んで頂くことができました。エスプレッソを初めて飲む方達も喜んで下さりました。新しいコーヒーの経験を提供して頂けたのはとてもやりがいを感じました。

井上:それはかなりやりがいがありそうですね。今までコーヒーのことをよく知らなくて、自分から進んで飲もうという気持ちにならない人にコーヒーの魅力を伝えられるのはフリーランスならではの魅力ですね。

近江:やりがいという点で言うと、自分が働いたことのない業種の方々と関わる事ができるのもフリーランスならではの魅力だと思います。様々な業種の会社様へケータリングで行くこともあるのですが、例えば車屋さんや結婚式場、アパレル会社などを訪れてエスプレッソやオリジナルロゴのカプチーノなどを提供します。

パーティーだったり福利厚生の一環での教室だったりするのですが、通常の生活では仕事で中々交わる事の無かった方から新しい発見や出会いがあるので楽しいですね。

井上:ちなみにフリーランスバリスタとして毎日気をつけていることとかってあるんですか?

近江:たとえ出店やカウンター外であったとしてもバールマン(バリスタ)としての気持ちを忘れないことだと思います。お客様や応援してくださる方あっての仕事なので、フリーランスに限った話ではないかもしれませんが、お客さまとのコミュニケーションや笑顔、応援してくださる方への感謝は忘れないようにしたいです。



JBAバリスタグランプリで上位入賞

井上:バリスタグランプリで上位入賞したという話も聞いたのですが、そもそもバリスタグランプリってどういうものなのですか?

近江:バリスタグランプリとは日本バリスタ協会(JBA)というところが運営している日本No.1のバリスタを決めようという大会です。要はバリスタ界の”M1グランプリ”みたいなものです。

井上:やはりそうなると選考もかなり厳しいんじゃないんですか?

近江:まず日本バリスタ協会にまず認定してもらう必要があり、そのための筆記、テイスティング、実技試験があります。日本バリスタ協会に認定をもらったら次は書類審査があります。そこから20人くらいが選ばれて、そこから予選で上位8人が選ばれます。 ”バリスタグランプリはバリスタ界のM1グランプリ”

そこから準々決勝、準決勝、決勝と進んでいきます。段階によって選考内容も変わってはくるのですが、主に見られる項目としては、エスプレッソの味、エスプレッソを作る動き、パフォーマンス、接客スキルなどが見られます。

井上:ではバリスタグランプリで賞をもらうにはかなりの腕が必要なんですね。協会つながりで言うと”イタリア国際カフェテイスティング協会”というところからも認定ももらっているようですが、これはどういうものなのですか?

近江:これは実際にエスプレッソの本場であるイタリアにも行って取得しました。エスプレッソをいかに楽しむかの秘訣やコーヒーの知覚・感覚的に評価(客観的、科学的、数学的)点数をつけていきます。

井上:そこまで極めているのですね!

エスプレッソの本場イタリアは別格

井上:エスプレッソの本場イタリアってやっぱりコーヒー文化そのものが日本とは違うんですか?

近江:違うと思いますね。日本人はインスタントや缶コーヒー、カフェなどではドリップなどで淹れたブラックコーヒーを飲むのが一般的だと思うのですが、イタリアではコーヒーはエスプレッソを飲む人がほとんどだと言われています。

イタリアではコーヒーを飲むところは”バール”と言って、バールでコーヒーを作る人のことをバリスタと言うのですが、日本の立ち飲みバーのような感じでエスプレッソを立ち飲みのバンコと呼ばれるカウンターで飲むのが一般的です。 お客様を笑顔にするデザインカプチーノ

値段も安くて、私が以前ミラノのバールで朝食にカプチーノとクロワッサンを注文した時は150円くらいでしたので、みんな毎日のようにバールに来ることができるのだろうなと思いました。昼休みにちょっとエスプレッソを飲みに来ても、立ち飲みだと一杯100円くらいなので、みんなサクッと利用していきます。

イタリアでは日本の人たちが缶コーヒーやコンビニコーヒーを飲むような感覚で、お客さんがバールに来てバリスタや店の常連さんと一言二言話して、エスプレッソを颯爽と飲んでいく感じです。それがなんとも絵になるのですよね…

井上:めちゃくちゃ羨ましい環境ですね。あまり日本のカフェではエスプレッソ単体を飲む人は少なくて、エスプレッソを飲むのは外国人観光客っていうイメージがなんとなくあります。

近江:イタリア人は本当にエスプレッソが好きなのだなと思ったのが、イタリア人の友達の家に滞在している時に、家でコーヒーを作る時にもマキネッタ(モカ)という家庭用のコーヒー器具を使ってエスプレッソを淹れていました。朝、家で飲む場合はエスプレッソに鍋で温めたミルクを入れてカフェラッテにする人が多いみたいです。

あとはイタリアではみんなエスプレッソの中に大量の砂糖を入れます。でも日本人はエスプレッソやドリップーコーヒーに砂糖を入れずに飲む事が多いので、イタリアの友達からは「日本人がコーヒーに砂糖を入れないのは宗教か何かなの?」と聞かれたこともあります(笑)



フリーランスのバリスタとしての今後の展望

井上:近江さんは初めからフリーランスのバリスタとして活動されていたんですか?

近江:いいえ、バリスタになろうと決意してからはバリスタ界の第一人者がいる東京、大阪のイタリアンバールで働かせて頂きました。しかし、家庭の事情で出身の岡山県に戻り、地元のカフェ&レストランで働きながら様々な分野の勉強もさせて頂いておりました。

それからしばらくして、バリスタの世界大会を観に行ったのですが、その時にもっといろんな世界をこの目で見てみたいなと思ってフリーランスのバリスタになることを決意し、周りの方々からも後押しして頂いて、2017年3月頃からフリーランスになりました。

井上:そうなのですね!バリスタとしてお店で働くのとフリーランスで働くのとではやっぱりかなり違いますか? ”フリーランスのバリスタは全てが自己責任”

近江:はい。やっぱりフリーランスになると分からないことが沢山ある事や自分の至らない部分に気づかされますね。全ての責任を持つということ、自分以外に自分の仕事の代わりがいないということはかなりの違いですね。

井上:今後の展望ややりたいことなどあったりしますか?

近江:とりあえず自分の視野を広げたいので、いろんな人との交流がしたいです。例えば異業種のお店や会社にケータリングを行ったり、知らない土地での出店などをしたり今まで自分が関わる事の無かった世界も見て知っていきたいし、色々な場所で自分の素晴らしいと思う世界や文化を共感し合える仲間を見つけていきたいです。

長期的なことで言うと、女性フリーランスバリスタとして結果を残したいです。女性だからこその男性とはまた違ったやり方や伝え方もできるはずなので、老若男女問わずエスプレッソやバールの文化をより身近にあるものにしていく活動を続けていきたいです。バリスタとして人に愛を与えられるよう努力して、出会った人たちに幸せを感じて欲しいなって思っています。

エピローグ

今回のインタビューでは、まず何よりコーヒー業界にフリーランスという仕事があるということに驚きました。バリスタになるにはカフェや喫茶店で働かなければいけないという固定観念を持っていましたが、必ずしもそうではないようです。

日本ではエスプレッソを飲む人は今現在はそこまで多くないですが、またコーヒーのトレンドが変化すればエスプレッソブームが到来するかもしれません。

個人的には近江さんのお客さんとのコミュニケーションを大事にして、お客さんに合わせたコーヒーを作るという姿勢にとても感銘を受けました。コーヒー関連のお仕事を募集中のようですので、興味がある方はぜひ一度試して見てはいかがでしょうか。

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