ブルボンポワントゥという絶滅寸前から復活したコーヒー豆

ブルボンポワントゥという絶滅寸前から復活したコーヒー豆

コーヒーの歴史を見ると、かつては世界的に人気を得て大ブームになったものでも、気候変動や病気などの影響で絶滅してしまった品種がいくつもあります。時の移り変わりは残酷ですね。 しかし、そんな中で絶滅しかけたコーヒーを復活させてみんなで飲めるようにしようという動きもあります。絶滅とは少し違いますが、インドのモンスーンコーヒーなどは、大昔に「黄金コーヒー」として大ブームになったものを現代風にアレンジしてコーヒー豆を精製しているものです。 そんな中で「ブルボンポワントゥ」というかつては伝説とまで言われたものの絶滅の寸前までいったコーヒーを復活させて、現代の世の中でも飲めるようにしている動きについて今回は書いていこうと思います。
参照記事
モンスーンコーヒーなどインド産コーヒー豆の特徴-黄金コーヒー

ブルボンポワントゥとは何か

すごい発音のしにくい名前ですが「ブルボンポワントゥ」とは数百年前に世界中から愛されたコーヒー豆の種類の1つです。アフリカとインドの間あたりに「ブルボン島(現在はレユニオン島と呼ばれている)」という小さい島があるのですが、そこで取れるコーヒー豆でした。 このブルボン島で取れるコーヒー豆は独特な風味がするために当時のコーヒー愛好家から好んで飲まれ、ルイ15世やバルザックなどといった有名人もお気に入りのコーヒー豆であったそうです。
香りがとても特徴的で、コーヒーを抽出した瞬間にするそのフルーティさの香りから「香りのブーケ」というニックネームを持っています。普通のコーヒー豆に比べてブルボンポワントゥは密度が非常に高いので焙煎がとても難しいそうです。 またコーヒー豆に含まれているカフェインの量も通常の1/2以下である点も特徴的です。このようにブルボン島という特殊な環境が作るブルボンポワントゥは他のコーヒー豆とは違う点が多くあり、その独特さが多くのコーヒー愛好家を魅了しました。 「ブルボンポワントゥ」という名前の由来ですが、「ポワントゥ」はフランス語で「尖った」という意味です。これは普通のコーヒー豆に比べて形が尖っているためにこの名前が付けられています。 また「ブルボン」は生産されているブルボン島の名前からそのままきています。このブルボン島なのですが、かつてはフランスから植民地支配を受けていました。第二次世界大戦が終焉すると同時に植民地は解放されていくのですが、実はこのブルボン島だけはアフリカの西側にあるにも関わらず未だにフランスの領土となっています。 フランスの王朝にも愛されたブルボンポワントゥでしたが、19世紀になると病害虫の被害やサイクロンなどといった自然災害の影響を受けて、コーヒー豆の栽培が一気に困難になりました。 小さい島でコーヒー豆が中心の産業だったのですが、次第にサトウキビなど他の農産物へと栽培が変更した影響もあり、1942年にはついにブルボンポワントゥの生産がされなくなり、実質的に絶滅寸前となりました。

UCCがブルボンポワントゥの復活に乗り出す

そんな絶滅の寸前までいったブルボンポワントゥですが、その復興に乗り出したのはなんと日本の会社であるUCC(上島珈琲)でした。1999年にフランス国立農業研究開発国際協力センターとブルボン島からのバックアップのもとにブルボンポワントゥの復興を始めました。 復興の手順はいたって原始的であり、まずはブルボン島内にあるブルボンポワントゥのコーヒー豆の木を手当たり次第みんなで探しました。探した結果まだ絶滅せずに残っていた木が2000本ほどあり、その中から品質の高いものを4本選んでマザーツリーとしました。
このような地道な過程で復活したブルボンポワントゥは日本でも販売が開始され、コーヒー豆で買うなら100gで8,400円、カフェで飲むなら1杯2,500円くらいとジャコウネコのコーヒー豆も顔負けの高価なコーヒーとなっています(笑)
参照記事
ジャコウネコ(コピルアク)という世界一価格が高いコーヒー豆
ただコーヒー豆の生産地からコーヒー豆を仕入れるだけではなく、コーヒーの文化や伝統的な部分にまで企業全体で行動をしており結果を出しているUCC(上島珈琲)はやはりすごいなあと思いました。

ブルボンポワントゥの味

絶滅の寸前から復活したブルボンポワントゥですが、その味はひとことで言うと、苦味が少なくてさっぱりしていて飲みやすいコーヒーです。「香りのブーケ」と呼ばれるだけあって非常に香りが強く、甘みも同様にあります。 そのフルーティさからチョコレートなどとの相性も良く、いろんなスイーツとのフードペアリングが楽しめます。滅多に飲めるコーヒーではありませんが、一度は飲んでみても損はないコーヒーだと思います。 地球温暖化など気候条件が今後どうなるかはわかりません。一部の研究機関は2080年にはコーヒー豆が絶滅する可能性があると発表しているところもあります。しかし、絶滅の危機を乗り越えてまさに復活したブルボンポワントゥのように、気候条件の変化、災害、病気の蔓延などがあっても今飲んでいるコーヒーがその危機を乗り越えて次世代へと伝わり続けると良います。
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