コーヒーの発祥地はどこなのかについてはいくつかの説がありますが、エチオピアでコーヒーは発見されたものではないかという説はかなり有力です。
どちらにしてもエチオピアではコーヒーを飲むという文化が古くから根付いており、それに伴ってコーヒーの飲み方も日本の茶道のように独特な文化が出来上がっています。
それらのコーヒーを飲む作法は「エチオピアのコーヒーセレモニー」と表現されることが多いのですが、その洗練された一連の作法は芸術的とも言われています。
今回はそんなエチオピアのコーヒーセレモニーについて、そもそもコーヒーセレモニーとは何か、どんな作法をするのか、なぜエチオピアではコーヒーセレモニーをするのか、などについて書いていこうと思います。
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エチオピアのコーヒーセレモニーとは何か
エチオピアのコーヒーセレモニーは、洗っていないコーヒー生豆からそれが1杯のコーヒーになるまでの一連の作業です。
まず初めに、コーヒーセレモニーでは主催者の女性が新鮮で良い香りのする草や花を床に置きます。次にお香を焚いて”悪い霊”を退散します。このお香はコーヒーセレモニーの間はずっと焚かれ続けることになります。
次に底が円形になっている黒色のコーヒーポットに水を入れて、それを熱せられた石炭の上においてお湯を作ります。次にコーヒー生豆を鉄でできた熱したフライパンに入れてコーヒー生豆に混じっている石の破片などを取り除き洗います。
そのままフライパンでコーヒー生豆を熱して焙煎をしていきます。満遍なく焙煎するために、定期的にフライパンを振ってシェイクしたり、かき混ぜたりします。コーヒー豆がしっかりと焙煎されてコーヒーオイルが滲み出てきたら焙煎は完了です。
コーヒー豆を焙煎している際には芳ばしいコーヒーの香りがするのですが、エチオピアのコーヒーセレモニーではこの香りを楽しむこともとても重要であるとされています。
焙煎が終わると次にコーヒー豆を挽きます。コーヒーを挽く際には臼のようなものが使用されて、コーヒー豆がはコーヒーの粉になっていきます。コーヒーが粉になったら先ほどの沸騰したコーヒーポットに入れて煮込みます。
コーヒーが出来上がったら陶器でできた小さなカップにコーヒーが注がれます。コーヒーは一気にカップに注がれて、少し高い位置から落とすようにして作られます。一気に注ぎ込むことでコーヒー豆カスがカップに入りにくくなります。
ケースバイケースではあるのですが、一番若い子供が最年長のお客さんに1杯目のコーヒーカップを持っていきます。そのあとにコーヒーセレモニーを担当した人がみんなにコーヒーを配ります。
お客さんは好みで砂糖を入れることがありますが、ミルクを入れることはほぼありません。お客さんはコーヒーを飲むと、コーヒーを作ってくれた女性とコーヒーの味を褒めることがお決まりです。
コーヒーは1杯だけで終わるのではなくて、3杯分続きます。コーヒーの味は少しずつ弱くなっていき、それぞれのコーヒーにはスピリチュアル的に重要であり、3杯目のコーヒーはコーヒーを飲んでいる人の幸運をもたらすと言われています。
エチオピアのコーヒーセレモニーにはいろんなパターンがある
上記で述べたコーヒーセレモニーの作法は一般的なものですが、実際には地域や村によってやり方が異なることもあります。
ある地域ではコーヒー豆が焙煎されたタイミングで、カルダモンやシナモンなどの香辛料が加わることもあります。コーヒー豆を臼で挽くのは大変なので、最近では電気で動くコーヒーグラインダーが使われることもあります。
また、コーヒーをカップに注ぐ際に、フィルターを使っていないのでどうしてもコーヒー豆のカスがカップに入り込んでしまうことがあります。そのためにフィルターのようなものを使ってコーヒー豆カスが入らないようにすることもあります。
エチオピアの中でもさらに田舎のエリアでは、コーヒーに砂糖ではなくて塩が入れられることもあります。他のエリアではバターやはちみつがコーヒーに入れられることもあります。ピーナッツ、ポップコーン、チェリーなどといったおつまみを一緒に出す村もあります。
このようにエチオピアのコーヒーセレモニーは特にこれが正解といった形が確立されているわけではなく、村や時代によって異なってきます。ただし、お客さんを喜ばせようという姿勢はいつの時代も変わりません。
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エチオピアのコーヒーセレモニーは大事な文化
エチオピアの一部の地域では、主婦をしている女性は1日に2回〜3回もコーヒーセレモニーを行うことがあるそうです。これは朝や夜に家族でコーヒーを飲むために行われるのですが、これとは別に家にお客さんが来た際や何かの記念日にコーヒーセレモニーを行うこともあります。
コーヒーセレモニーはエチオピアに存在する多くの村で最も重要な社会的なイベントであると考えられており、コーヒーセレモニーを行うことは相手を尊敬し、友好関係をアピールしているとみなされます。
コーヒーセレモニーに招待されたお客さんは政治、社会、噂ネタなど幅広い話題について語り合います。当然コーヒーの話題が上がることもあり、コーヒーセレモニーを取り仕切ってくれた女性やコーヒーの味などについても話題に上がるようです。
たとえ突然の来客で不定期な時間帯であったとしてもコーヒーセレモニーは開かれることが多いようです。エチオピアにおいてコーヒーセレモニーは社会的な交流にとどまらず、スピリチュアル的な役割も果たしており、その意味でもエチオピア文化におけるコーヒーセレモニーの意義は大きいです。
このようにエチオピアではコーヒーセレモニーという方法でお客さんをコーヒーで”おもてなし”する文化があります。昔ながらの方法でコーヒーで交流するのも悪くないですね。
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