「サードウェーブのコーヒーが○○でー」などというセリフをよく聞きますが、実際のところサードウェーブとは何なのかはっきりとしていない人も多いのではないでしょうか。サードウェーブとは、コーヒーを芸術的に作って提供することだと僕は認識しています(笑)
コーヒーの木からコーヒーの実を採って、焙煎して、コーヒーを挽いて、コーヒーを淹れるまでを、丁寧に行い、クラフトビール的なテンションで作って、コーヒー1杯をガチめに作ることです。
この1杯を全力で作るスタイルのコーヒーですが、世界的には別に今に始まった話ではありません。むしろ昔流行ったスタイルが復活していると言った方が正しいと思います。
インスタントコーヒーや缶コーヒー、またはスタバのようなファストコーヒー(そんな用語あるか知りませんがw)が流行る前から既に、サードウェーブのように1杯ずつ全力でコーヒーを作っているカフェは存在していました。なので、どちらかというと復活という感じです。
フォースウェーブが何になるかを予測するためにも、まずはファーストウェーブ、セカンドウェーブ、サードウェーブを振り返りたいと思います。
目次
1). ファーストウェーブはコーヒーの大量消費
2). 真空パックでコーヒー豆を保存する方法が発明される
3). ファーストウェーブを引っ張った企業:Folgers
4). ファーストウェーブを引っ張った企業:Maxwell House
5). 世界初の家庭用ドリップマシンMr.Coffee
6). セカンドウェーブはチェーン店による美味しいコーヒーの提供
7). スターバックスコーヒー
8). そして訪れるサードウェーブコーヒーの波
9). サードウェーブコーヒーのBIG3
10). フォースウェーブのコーヒーは既に存在するのか
11). フォースウェーブはオンラインと家庭用コーヒー?
ファーストウェーブはコーヒーの大量消費
ファーストコーヒーの始まりは1800年代です。アメリカで当時の起業家がコーヒーを売ると儲かりそうだなと思い一般家庭にコーヒーを売り始めたのがきっかけです。”Folgers”や”Maxwell House”といったブランドがアメリカ中に広がっていきました。
当時のコーヒーはひとことで言うと、「安かろう不味かろう」スタイルです。とにかく一般大衆にコーヒーを売るために、質の悪いコーヒーを大量に販売していました。質が悪いことで批判もたくさんされましたが、これがコーヒー業界の全ての始まりでした。
- 参照記事
- インスタントを作るスプレードライ製法とスリーズドライ製法とは
真空パックでコーヒー豆を保存する方法が発明される
1900年になるとHills Bros. Coffeeがコーヒー豆を真空パックする方法を発明しました。これでコーヒー豆が長期間保存できるようになったのはかなり大きかったそうです。それまでは鮮度が保てなかったので、どうしても地方でばかり消費されていたコーヒー豆がニューヨークやサンフランシスコといった大都市でも消費されるようになりました。
同じく1900年代の大きな変化はインスタントコーヒーの発明です。あまり知られていないですが、
インスタントコーヒーは日本人の加藤サルトリ博士によって作られました。
簡単にすばやく作れて、かつ専用の機械が要らないインスタントコーヒーはばかうけしました。第一次世界大戦や第二次世界大戦では兵士によってもかなり飲まれたそうです。1938年になるとお馴染みのNestleがインスタントコーヒーで大ヒットして大量のインスタントコーヒーを提供しました。
ファーストウェーブを引っ張った企業:Folgers
1800年代の中頃にWilliam H. Boveeという人がThe Pioneer Steam Coffee an Spice Mills companyという会社をカリフォルニアに設立しました。その会社は今までは上流階級の人によってのみ飲まれていたコーヒーを、缶詰めして中流階級の人たちにも飲んでもらおうと事業を行っていました。
そこで働いていたのが、後にFolgersを設立する若き日のJames A. Flogerでした。途中で会社を辞めたり戻ったりと色々あったものの、最終的にFlogerはこの会社を買い取って、名前をFlogersと改名しました。この会社はその後、さらなる成長を遂げ、コーヒーの大量生産をアメリカにもたすことになりました。
ファーストウェーブを引っ張った企業:Maxwell House
この会社もFlogersと同じく1800年代にアメリカのコーヒーのファーストウェーブを引っ張った企業になります。創業者のJoel Cheekは自分がコーヒーを出していたホテルの名前にちなんでMaxwell Houseという会社を設立します。
この会社は大量消費の時代にコーヒーに関する効果的な広告をいくつも打ち出しました。それによってコーヒーは金持ちじゃない一般人でも飲めるものだという印象が広がり、コーヒーの普及に大きく影響します。マーケティングに使った大量の資金はそれに見合った成果をもたらし、Maxwell Houseはアメリカで最も有名なコーヒー会社となり、アメリカ中を席巻しました。
- 参照記事
- レギュラーソリュブルコーヒーとインスタントコーヒーの違い
世界初の家庭用ドリップマシンMr.Coffee
ファーストウェーブを締めくくるのは、世界初の家庭用ドリップマシンのMr.Coffeeです。この会社はVincent Marottaという起業家によって作られたコーヒーメイカーです。
このドリップマシンの登場によって、家庭でも”比較的に”美味しいコーヒーが飲めるようになりました。
1970年代には毎日4万を超えるドリップマシンが売れるようになり、家庭で美味しいコーヒーを手軽に飲めるとして爆発的なヒットを起こしました。
セカンドウェーブはチェーン店による美味しいコーヒーの提供
ファーストウェーブからセカンドウェーブに移ったきっかけはひとことで言うと、コーヒーが美味しくなかったからです(笑)
一般人もコーヒーは実はインスタントなどよりももっと美味しく飲むことができるということに気がつき始め、コーヒーをただの飲み物と見るのではなくて、飲んで楽しむものと考えるようになりました。このコーヒーをより美味しく飲むための手法は、当時のワイン業界の加工方法等の影響も大きく受けているとも言われております。
ただのドリップコーヒーではなくて、エスプレッソやラテなども飲まれるようになり、スターバックスコーヒーなどのコーヒーチェーン店が登場してきました。
スターバックスコーヒー
カリフォルニアのバークレーにあったPsst’s Coffeeのビジネスモデルを参考にして、1971年にスターバックスコーヒーは創業しました。当時のスターバックスのウリは、新鮮に焙煎されたコーヒー豆を提供するお店です。
とにかくコーヒー豆の新鮮さに徹底的にこだわってスターバックスは作られました。そういう意味ではスターバックスの起源は、セカンドウェーブというよりもサードウェーブ寄りだったと言えるかもしれません。
実は現在のCEOであるHoward Schultzは、スターバックスの創業メンバーではありませんでした。初めはマーケティング担当で働いていた社員だったのです。しかも創業メンバーとは大きく対立して、スターバックスを一度辞めています。
その後は自分でコーヒー店を出してそれが大ヒットし、そのお金をもとに
1987年に約4億円($3.8M)でスターバックスを買収しました。そしてスターバックスにてラテなどのエスプレッソ系のドリンクを提供して、それが大ヒットしました。
そして
2000年には3,000を超える店舗を持つことになり、人々により美味しいコーヒーとエスプレッソ系のドリンクを提供することになりました。まさにスターバックスはセカンドウェーブの象徴です。
他のコーヒーチェーン店もスターバックスコーヒーに続くようにお店を出していきます。この時には、コーヒーはその味もさることながら、社交的に友人や家族などと交わる場としても重要になってきました。
- 参照記事
- フラペチーノ誕生秘話!スタバの人気商品はどう生まれたのか
この時に誕生したセカンドウェーブの代表的なお店としては、
Caribou Coffee Company、The Coffee Bean and The Leaf、Seattle’s Best Coffee、Port City Java、Dutch Bros. Coffee, Its A Grind Coffee Houseなどが有名です。
そして訪れるサードウェーブコーヒーの波
サードウェーブのコーヒーという言葉が言われるようになったのは2002年くらいからであり、比較的に最近です。Wrecking Ball Coffee RoasterのTrish Rothgebによって言われ始めたといわれています。サードウェーブコーヒーはコーヒーそのものの特徴を注目しています。
コーヒーはもっと美味しく飲めるのではないかという考えがベースにあるサードウェーブは、今まさに来ている波です。サードウェーブでは、コーヒーの育つ土壌、位置する高度、加工方法など全てが重要になってきます。
サードウェーブは大手のチェーン店というよりは、本当にこじんまりとコーヒーを提供しているカフェで提供されています。小さい家庭内で焙煎して、本当にコーヒーを愛しているバリスタによって提供されるようなイメージです。グローバルに攻めるというよりは、自分の店舗のある地域で愛されるカフェを目指すという人たちが多いです。
サードウェーブコーヒーのBIG3
サードウェーブコーヒーを代表する企業としてよく名前があげられる
BIG3は、シカゴを拠点に活動するIntelligentsia Coffee & Tea、ノースカロライナを拠点に活動するCounter Culture Coffee、ポートランドを拠点に活動するStumptown Coffee Roasterの3つです。
これらの3つのコーヒーがサードウェーブを作り上げたと言っても過言ではないかもしれません。よくBIG3などと表現されることがありますが、なんか野球みたいですね(笑)
コーヒーの品質、産地からの直送、事業としての安定化の観点からこれらの会社の貢献度は半端ないです。コーヒーに関する”教育”を一般大衆にしているという観点からも、コーヒー業界を引っ張り上げており、とても重要な会社になっております。
フォースウェーブのコーヒーは既に存在するのか
今まで見てきたように、コーヒー業界はこの100年間で本当にいろんなことがありました。かつては、「コーヒーってただ目を覚ますための飲み物でしょ(笑)」と思われていたり、「コーヒーって要はデザートを食べるための合わせ物でしょ(笑)」と思われていた頃もありました。
その頃と比べてコーヒーは大きく変化してきましたが、そこから更に変化を遂げてフォースウェーブが来ることはあるのでしょうか。はっきり言って分からないです。というかわかるわけがないです。
そもそも○○ウェーブという定義自体があやふやなので、例えばこれから来る新しいコーヒーのサービスがフォースウェーブになるかもしれませんし、サードウェーブの延長線上になるのかもしれません。
とは言うものの、フォースウェーブなんか気にせずに今のコーヒーを楽しもう的な感じで締めても面白くないので、個人的にフォースウェーブはこんな感じなんじゃないかなというのを予測したいと思います。
- 参照記事
- 1億円以上の資金調達したコーヒースタートアップの業界地図
フォースウェーブはオンラインと家庭用コーヒー?
完全に素人の僕の意見なので、てきとうな予測なのですが、個人的にはフォースウェーブのコーヒーは、”オンラインでのコーヒー豆の提供”と”家庭用のコーヒー”の2つがキーポイントになるのではないかなと思います。
サードウェーブのコーヒーが始まったのが2002年であり、もうそれから15年もの月日が経っています。コーヒー業界はまだまだ進化を遂げる余地があると個人的には思っていますし、15年経ったらそろそろサードウェーブじゃなくて次のウェーブに乗ってもいいんじゃないかとも思います。
僕が思うフォースウェーブは、家庭用で飲むようなコーヒー豆をオンラインで効果的に販売するというものです。現状の家庭用のコーヒーはコーヒー豆屋で買ったコーヒー豆を自分で挽いてドリップするパターンか、インスタントコーヒーやカップ型のマシンでの抽出が多いと思います。
そのためにコーヒー豆の選択肢も少なければ、本当に自分にあったコーヒー豆かも分からずにとりあえず飲んでいる人が結果として多い印象があります。実店舗のコーヒー業界の改善はこの100年間でかなりされたものの、家庭用のコーヒーの改善はほとんどされていません。僕はここにフォースウェーブが起こる余地があるのではないかと思います。
今までファーストウェーブ、セカンドウェーブ、サードウェーブはアメリカで起こってきました。なので次のフォースウェーブもアメリカで起こる可能性が高いと思います。そこでアメリカのコーヒー系のスタートップでベンチャーキャピタルや投資家などから多額の資金を集めて成長段階にあるスタートアップを見てみると、それはどこも「オンライン」と「家庭用コーヒー」の2つが絡んでいるのが特長的です。前回の記事でご紹介したSudden Coffeeもその中の1つです。
- 参照記事
- 今までにない高級インスタントコーヒーが開発された!-Sudden Coffee
果たしてこれらのスタートアップが成功してフォースウェーブを起こすのか、それとも道半ばで失敗して、ただの夢物語で終わるのかは誰にもわかりません。しかしコーヒー業界に新しい風を巻き込もうと挑戦を続けるこれらのスタートアップは見ていてとてもカッコイイと個人的には思います。このブログでもコーヒーというフィールドで新しいことに積極的に挑戦しているスタートアップを国を問わずにご紹介していければと思います。