中南米はコーヒーの生産がとても盛んなエリアです。コーヒーの生産量がNo1のブラジルにはじまり、コロンビアやメキシコなど有名なコーヒー豆の生産国がたくさんあります。今回ご紹介するグアテマラもそんな中南米でコーヒー大国として有名です。
グアテマラの主要産業は農業であり、コーヒー以外にも、バナナや砂糖などを多く生産して世界中に輸出しています。国土の大きさは日本の1/3くらいの面積しかありませんが、高いコーヒー豆の生産量を誇っており、日本でもスターバックスの人気コーヒー豆として知られており、缶コーヒーにもよく使われています。
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目次
1). グアテマラ産コーヒー豆の栽培方法
2). グアテマラ産コーヒー豆の歴史
3). グアテマラコーヒーの味
4). アンティグアだけじゃないグアテマラ産のコーヒー
5). グアテマラコーヒーとのフードペアリング
グアテマラ産コーヒー豆の栽培方法
(1) 火山灰性の肥沃な土壌がグアテマラ産コーヒーの土台
グアテマラの国土の70%は山岳地域であり、フエゴ火山、パカヤ火山、サンティアギート火山という3つの火山が存在しています。その3つの火山の影響で土壌が火山灰性になります。
火山灰性の土壌はミネラル分が豊富に含まれ、水はけが良くなります。そのためにコーヒーを栽培するのに最適な土壌となり、グアテマラ産のコーヒー豆を育てる土台となっているのです。
(2) 寒暖差がグアテマラコーヒーを美味しくさせる
グアテマラは赤道近くの熱帯気候ですので、平地は非常に暑くコーヒーの栽培に適していません。しかし山岳地帯であり、高地は涼しくてコーヒーの栽培に最適です。
また昼間と夜間の温度差が激しく、夜は「熱帯の冬」などと表現されることもあります。この昼と夜の温度差が激しくなるほど、コーヒー豆がしっかりと引き締まるために、美味しいコーヒーを作ることができます。
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(3) 日照量を管理するためにシェイドツリーが使われている
コーヒー豆の栽培を行うにあたり、日照量のコントロールも非常に重要になります。特に熱帯地域の場合には、太陽の強い光が当たり続けるので、強すぎる太陽の光を遮る必要があります。
そのためにシェイドツリーと言われる日光からコーヒー豆の木を守り、代わりに太陽の光を受ける木がグアテマラにはコーヒー豆の木に隣接して多く栽培されています。
このシェイドツリーはただコーヒー豆の木の育成を助けるだけでなく、人工森林となり地球温暖化対策に貢献しているという意見や、渡り鳥の避暑地としても貢献しているという意見があります。
またグアテマラの降水量ですが、雨季と乾季が定期的にあり、コーヒー豆の木を育てるのに適度な降水量が維持されていると言われています。
(4) 栽培されたグアテマラコーヒー豆は丁寧に収穫される
グアテマラのコーヒー豆は、通常1〜3月に開花し、9〜4月に収穫されます。収穫の時期に幅がありますが、これは標高が低くて暖かい場所では9月と収穫が早く、標高が高くて涼しい場所では収穫が遅くなるためです。
グアテマラのコーヒー豆は収穫された後の工程としては、果肉除去して水洗いしたものが天日乾燥されるというパターンが多いです。この製法をウォッシュド製法と言います。プランテーションのような大規模農場は自前の水洗設備を持っていてそれぞれが水洗します。一方で、そこまで大きな設備を自分で持っていない小規模農園では水洗処理場をいくつかの農園で共有しています。
また、グアテマラ全体でコーヒー豆の品質を向上させようという取り組みもあります。例えば「ANACAFE(グアテマラコーヒー院)」はコーヒー豆の生産者によって運営されている組織ですが、グアテマラのコーヒー農場支援で貢献しています。グアテマラ内のコーヒー生産者の位置情報、土壌分析、降水パターン、霜災害の予測などといったデータをコーヒー農場に提供しています。
他にも「APCA(アンティグア生産者組合)」という組織があります。かつてグアテマラのアンティグア産の偽物コーヒーが出回ったことがあり、これを防ぐためにコーヒー農家が集まって、本物のグアテマラアンティグア産のコーヒーの証明を行っているものです。
数百のコーヒー農家が集まって作られており、本当にグアテマラのアンティグアで作られたコーヒー豆には麻の袋に「Genuine Antigua coffee」のマークが入ることになっています。
このようにグアテマラではコーヒー豆の品質を維持するために多様な工夫がされており、年間3,500袋ほどのコーヒー豆が世界中に輸出されています。
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グアテマラ産コーヒー豆の歴史
グアテマラにコーヒーが伝わったのは1750年頃であり、修道士によって持ち込まれたのが最初であると言われています。(それよりもっと以前から先住民であるインディオを使ってコーヒー豆を栽培していたという意見もあります。)
しかし最初はそこまで広く普及せず、1850年頃に本格的にコーヒー豆の木の栽培が始まっていきました。1850年頃にはグアテマラの輸出の中心であった天然染料が化学染料に押されて輸出が伸び悩み、新しい産業を模索していた中で、隣国のコスタリカがコーヒーで発展していたのを真似する形で普及していきました。
1969年には先ほど説明した、グアテマラ全国コーヒー協会である「ANACAFE(グアテマラコーヒー院)」が設立されてグアテマラのコーヒー豆の品質は大きく向上しました。しかし1960年から2000年くらいまでグアテマラは内戦が勃発しており、政治的に不安状態が続き、コーヒー豆の生産に関しても不安定な時期が続いていました。
グアテマラコーヒーの味
グアテマラのコーヒーは、フルーティーな香りがあり、しっかりとした酸味とコクが特長です。苦味はあまりなくて飲みやすいコーヒーであると言えます。クセもなくて後味もスッキリしています。
また、他のコーヒー豆とも合わせやすく、ブレンドとして使われることもよくあります。グアテマラとひとことで言っても栽培エリアは多岐にわたるので、どこで採れたコーヒー豆かによっても味が異なっていきます。
グアテマラ産のコーヒーはグアテマラアンティグアとして、スターバックスでも人気なコーヒー豆の1つであり、その飲みやすさから多くの人に愛されています。
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アンティグアだけじゃないグアテマラ産のコーヒー
グアテマラではコーヒー豆を栽培する標高によって格付けされていきます。標高1350m以上が「ストリクトリー・ハードビーン(SHB)」、1200~1350mが「ハードビーン(HB)」、1050~1200mが「セミハードビーン(SH)」、900~1050mが「エクストラ・プライム・ウォッシュド(EXP)」といったように7等級に分かれており、標高が高い方がコーヒー豆のランクは上がります。
またグアテマラという1つの国の中でコーヒー豆の産地が複数存在しており、7つの代表的なコーヒー産地があります。その中でも特に有名なのが「アンティグア」です。グアテマラでのコーヒー栽培もこのアンティグアで始まった伝統的な場所でもあります。
アンティグアはスターバックスコーヒーでも使われており人気商品です。標高は1300m〜1600mくらいであり、その美味しさからグアテマラ産の中でも人気なコーヒー豆です。
アンティグアの良質なコーヒー豆は世界的にも高い評価を受けており、アグア火山、フエゴ火山、アカテナンゴ火山に囲まれた火山灰性の肥沃な土壌はコーヒー豆を育てるのに最適な環境となっております。
アンティグア以外の人気なエリアとしては「ウェウェテナンゴ(すごい名前w)」があります。ここはグアテマラの中でも最も標高の高い1900m前後の場所であり、高級なコーヒー豆として知られています。
他にも、コパン、アンティトラン、アカテナンゴといったエリアがグアテマラ産のコーヒー豆の産地として知られています。最近ではグアテマラ内でもスペシャリティーコーヒーとして各農家での差別化が図られつつあり、様々な味のコーヒーを楽しむことができます。
グアテマラコーヒーとのフードペアリング
フルーティーさがウリのグアテマラコーヒーはそのままですが、フルーツタルト、アップルパイといったフルーツ系の食べ物との相性がとても良いです。また、さっぱりとした飲み心地のために、ずっしりとしたお菓子よりもあっさり系の食べ物がよく、クッキーなどがよく合います。
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