日本人であればコーヒーに興味なくても誰もが一度くらいはブルーマウンテンの名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。最近ではスタバといったセカンドウェーブ系のチェーン店が増えた影響で、なかなかカフェでブルーマウンテンの名前を聞くことはなくなりましたが、未だに大人気のコーヒー豆です。
このブルーマウンテンは中南米のジャマイカで取れるコーヒー豆ですが、名前はよく聞くのに、なんでスタバではブルーマウンテンが売ってないのかなあと学生時代はずっと疑問に思っていました。
ちなみに数年前からスタバでは「スターバックスリザーブ」といって一部のお店でのみ普通のお店では取り扱っていないコーヒー豆が飲めるというサービスを提供しています。
そのスターバックスリザーブではブルーマウンテンのコーヒー豆を提供しており、ブルーマウンテンのコーヒーを飲むことができます。しかし、一般の店舗ではブルーマウンテンのコーヒー豆を販売していません。
今回は、ブルーマウンテンのコーヒー豆とはそもそも何者なのか、そしてなんでスターバックスではブルーマウンテンのコーヒーを提供していないのかについて書いていこうと思います。
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目次
1). ジャマイカといったらウサイン・ボルトとコーヒー
2). ジャマイカ産のコーヒー豆の代表格「ブルーマウンテンコーヒー」
<3). ジャマイカ産コーヒー豆の味
4). ブルーマウンテンの栽培方法
5). ジャマイカ産コーヒー豆は日本人しか飲まない?!
ジャマイカといったらウサイン・ボルトとコーヒー
ジャマイカと言われて一番最初に思い浮かべたのは、僕はウサイン・ボルトでした。まさに人類最速の男であり、見ていて気持ちいいですね。余談ですが、僕は走り方がキモくていつも100m走では、走り方がエリマキトカゲみたいといじられてました(笑)
そんなジャマイカは中南米にあるカリブ海に浮かぶ小さな島国です。ウサイン・ボルト以外にも、個人的には「クール・ランニング」というボブスレーの映画がすごい好きで金曜ロードショーでよく見てました。他にもレゲエのボブ・マーリーもジャマイカ出身であり、小さな島国ではあるもののポテンシャルが半端ないです。
そんなジャマイカですがコーヒーも有名であり、ジャマイカの農業を支えています。実際に
島国ジャマイカの国土の80%が山地であり、コーヒーを栽培するのに適した要素がすべて整っております。
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ジャマイカ産のコーヒー豆の代表格「ブルーマウンテンコーヒー」
ジャマイカ産のコーヒー豆で有名なのは何といっても
「ブルーマウンテンコーヒー」です。だいたいの高級なコーヒー豆にはニックネームが付けられているのですが、ブルーマウンテンコーヒーのニックネームは
「コーヒーの王様」です(笑)
ブルーマウンテンコーヒーは、ブルーマウンテン山脈のごく限られた一部のエリアでのみ栽培されています。そのために生産量も少なく、希少価値の高いコーヒー豆として取り扱われています。
(1) ブルーマウンテンは一部の限定エリアで採れたコーヒー豆
ブルーマウンテンコーヒーは限られたエリアで採れたコーヒー豆にのみその名前を付けることができます。
1953年にジャマイカ政府がブルーマウンテンに関する法律を制定し、コーヒー豆の生産エリアを明確化しました。
そして、ブルーマウンテンの名称はブルーマウンテンの指定されたエリア以外で作られたコーヒー豆には使ってはいけないことになりました。なので、ブルーマウンテンのエリアに隣接した場所で作られたコーヒー豆でもたとえ品質が良くてもブルーマウンテンを名乗ることはできません。
ジャマイカ産のコーヒー豆の25%はブルーマウンテンですが、残りの75%では他のコーヒー豆が生産されています。
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(2) コーヒー豆の大きさでランク分けされ「ブルーマウンテンNo.1」が最高位
ブルーマウンテンのコーヒーはそのコーヒー豆の大きさでランク分けされています。大きい順番にランクが高く、
ブルーマウンテンNo.1、ブルーマウンテンNo.2、ブルーマウンテンNo.3、ピイーベリー(丸豆)の4つに分けられます。ちなみにブルーマウンテンNo.1の称号を手にすることができるのは、全体の30%程度です。
当然ながら大きければなんでもいいというわけではなく、品質も重要です。具体的には、
欠点豆の混入率が3%未満であること、
水分含有量が10%〜12.5%であること、検査員のチェックを受けて味覚官邸に合格することなどが必要です。
「コーヒーの王様」としてのクオリティを維持するために、出荷前の段階でしっかりとチェックし、厳選されたコーヒー豆のみがブルーマウンテンコーヒーとして飲まれるわけです。
ちなみにブルーマウンテンコーヒー以外のコーヒーでは、「ハイマウンテン」がブルーマウンテンの弟的な感じで人気があります。
ハイマウンテンは標高が500m〜1,000mくらいと比較的に低い標高で作られています。他にも「プライムウォッシュド」などいくつかのコーヒー豆が生産されています。
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ジャマイカ産コーヒー豆の味
ジャマイカ産のコーヒーである「ブルーマウンテン」の味ですが、ひとことで言うと絶妙なバランスの良さであると思います。ブルーマウンテンは、苦味、甘味、香り、コク、酸味と全てがとにかく絶妙なバランスです。
この味の調和具合が美味しいと言われている理由なのではないかと思います。芳醇なコクとフルーティーな香りがし、味がまろやかです。クセがなくてやわらかいのど越しは飲んでいて美味しいです。
その繊細さは特に日本人からウケそうな味であり、コーヒーに興味がない人でも人生で1回くらいは飲んでみる価値があると個人的には思います。
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ブルーマウンテンの栽培方法
そんな日本でも高級コーヒー豆として広く流通しているジャマイカ産のコーヒー豆ですが、その美味しさの理由はコーヒー豆の栽培条件と栽培方法にあります。
亜熱帯地域にあるブルーマウンテン山脈の標高800m〜1,200mで採れるそのコーヒー豆は美味しいコーヒーを育てるためのベストな条件が揃っています。
まずは気温ですが、ブルーマウンテンエリアの気温は昼と夜の温度差が激しいことがポイントです。
昼は30度で夜は15度と気温差が激しいので、昼間はコーヒー豆の実が膨らみ、夜間は引き締まります。これを毎日繰り返すことで身が引き締まった大粒のコーヒー豆ができます。
次に降水量ですが、
年間で1,500mm~1,800mmとコーヒーを育てるのにぴったりの降水量です。さらにブルーマウンテン山脈全体を深い霧が定期的に覆うことがあり、これによりコーヒーチェリーに適度な湿気を与えて、引き締まったコーヒー豆ができます。
土壌についてもコーヒー豆を育てるのに適切と言えます。ブルーマウンテンエリアの土壌は海底の有機質を多く含む火山灰であり、コーヒー豆の木を育てるための養分がしっかりと入っています。またコーヒー農園のほとんどが急な斜面にあるので、水はけが良くコーヒー豆の木が育つのに丁度良い環境になっています。
最後に収穫についてですが、斜面が急なエリアでの収穫は機械で行うことが困難なので、人の手によって収穫されています。高品質を維持するためにしかりと完熟した赤いコーヒーチェリーだけが一粒ずつ手摘身されています。
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ちなみに運送方法でも工夫がされています。基本的にコーヒー豆は運送される際には麻の袋に詰められて運ばれるのですが、ブルーマウンテンの場合には「ブルマン樽」という樽で輸送されます。
これは歴史的な背景もあり、イギリスから船積みされた小麦粉などの空き樽に、せっかくだからとブルーマウンテンのコーヒー豆を入れたのが発端になっています。このブルマン樽には、木の内外の湿度を吸収することで、湿度の変化をできるだけ最小限に抑える効果があります。
気温の変化についてもできるだけ抑えることができます。このように、ブルマン樽は最高級のコーヒー豆を影で支えているのです。
ジャマイカ産コーヒー豆は日本人しか飲まない?!
(1) ジャマイカ産のコーヒー豆を復活させたのは日本
ジャマイカではイギリスの植民地支配を受けていた際には、もともとコーヒー豆の栽培が盛んでしたが、20世紀の初めあたりから徐々に衰退していきます。大雨によって土壌が流出したり、労働力が不足したりしたことが主な原因であるとされています。
しかし20世紀の半ばに、日本の手助けにより産業公社が作られて復興が始まります。1973年には更に日本からの支援が加速して、円借款により「ジャマイカ・ブルーマウンテンコーヒー開発事業」が推進されました。このようにブルーマウンテンのコーヒー栽培の復興は日本の手によって意図的に作られたのです。
(2) ブルーマウンテンコーヒーは英国王室御用達?!
日本に初めてブルーマウンテンコーヒーの輸入が行われたのは、昭和12年頃であり、輸入されたコーヒー豆の量もごくわずかだったのでとても高額でした。
諸説はありますが、そのために高い値段で販売する必要があり、考えられたのが「英国王室御用達」というフレーズでした。それがヒットして日本でもブルーマウンテンのコーヒーは特別なブランドとして有名になりました。ちなみに本当に英国王室御用達であったかは謎です(笑)
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(3) 日本ではブルーマウンテンコーヒーは過大評価されている
実際に、日本では最高級で知られているブルーマウンテンのコーヒーですが、世界的には最高級のコーヒー豆ではありません。
国際コーヒー機関(ICO)というところがコーヒーの格付けを4段階で行っていますが、ブルーマウンテンはワンランク下の2番目の順位にランクインしています。
そのために、日本ではブルーマウンテンが商業的な理由から過大評価されていて、本来のコーヒーのグレードを無視した値段設定になっていると度々指摘されているのも事実です。
(4) ブルーマウンテンの輸入量<販売量という矛盾
ブルーマウンテンのコーヒー豆の問題点のもう1つに、販売量が輸入量を上回っているという矛盾もあります。普通に考えると輸入されたコーヒー豆が日本で販売されるので、販売量が輸入量を超えることなどありえなさそうです。
しかし、ブルーマウンテンコーヒーはブレンドされるために、販売量が輸入量を上回るという状況が発生します。一般的にいくつかの産地で採れたコーヒー豆をブレンドするのは、混ぜることで味をより良くするためです。
残念ながらブルーマウンテンの場合にはそうでなく、ただ単にブルーマウンテンといブランド名を使いたいからという理由で、品質を落としてブレンドされているケースも多いです。
ちなみに
ブルーマウンテンブレンドと名乗るためには30%は本物のブルーマウンテンのコーヒー豆を入れる必要があり、30%ギリギリだけブルーマウンテンを入れているものが市販のコーヒー豆ではよく見られます。
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(5) なぜスタバにブルーマウンテンのコーヒー豆は無いのか
全世界でカフェ展開しており、もはやカフェの代名詞にもなっているスターバックスですが、スタバでは一部を除いてブルーマウンテンのコーヒーが販売されていません。
その理由の1つは、そもそも日本人しかブルーマウンテンを飲まないからです。 ブルーマウンテンはその80%〜90%が日本に輸出されており、ほとんどが日本人によってのみ飲まれており、グローバル展開する企業にとってはあまりにも“ローカル“なのです。
2つ目の理由はその生産量が少なく高価だからです。そもそもジャマイカ産のコーヒー豆自体が、
年間で35,000袋くらいしかなく生産量が少ないです。それに合わせて値段も上がっていき、スタバでは取り扱えないというわけです。
(6) 美味しいコーヒーが飲まれ続ける
いろいろとブルーマウンテンコーヒーの負の側面を書いてきましたが、背景なんて倫理的に悪いことをしていない限りはどうでもよくて、美味しければなんでもいいというのが僕の個人的な意見です。
コーヒーの味の観点から見ると、クセがなくてバランスがよく、日本人が好きそうな味なのではないかと思います。なのでブルーマウンテンのコーヒーは適切な値段かどうかは置いておいても、飲む価値が間違いなくあると思います。
最近ではサードウェーブコーヒーやスペシャルティコーヒーなどの影響で、必ずしも誰もがブルーマウンテンが一番美味しいとも言わなくなってきています。ブランドや値段の高さよりも、やっぱり自分が美味しいと思えるコーヒーをこだわって飲むのがいいですね。
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