「ピーベリー」というコーヒー豆の種類を聞いたことのある人はそんなにいないのではないでしょうか。カフェなどに行ってもピーベリーを売っているお店は日本中探してもほとんどないと思います。
ピーベリーはコーヒー豆を収穫した際に、ごくごく稀に発見される異常な形をしたコーヒー豆であり、一部のコーヒー愛好家から好んで飲まれています。今回はそんなピーベリーについて詳しく書いていこうと思います。
そもそもピーベリーとは何か
(1)ピーベリーは種子が1つしかないコーヒー豆
普通のコーヒー豆はフラットビーン(平豆)とも言われており種子が2つあります。コーヒーチェリーの中に半円球のコーヒー豆が2つ入っており、丸い部分と平らな部分があり、平らな部分で向かい合うようにコーヒー豆が入っています。
一方でピーベリー(丸豆)は種子が1つしかないコーヒー豆です。コーヒーチェリーの中にコーヒー豆が1つしか入っておらず、コーヒー豆同士でぶつかりあうことなく成長するので、形も丸くなります。
このコーヒーチェリーに通常2つあるはずのコーヒー豆が1つしか入っておらず、丸い形をしたコーヒー豆のことをピーベリーと呼んでいます。
- 参照記事
- コーヒー豆の産地と栽培条件の特徴について【保存版】
(2)ピーベリーは3〜5%の割合でしか採れない
ピーベリーが含まれる割合は、収穫量の3~5%程度であり極めてレアなコーヒー豆です。コーヒーチェリーの状態ではそれがピーベリーなのかどうかプロでも見極めることが難しいのですが、コーヒー豆は生産の過程で“選別”という工程があります。
コーヒー農家がコーヒー豆を出荷する前に、コーヒー豆が割れていないか、虫食いに会っていないかなどを目視で確認して、欠点豆を取り除きます。その過程でピーベリーは発見されることがあり、普通のコーヒー豆であるフラットビーンに比べて明らかに形が異形であるのですぐに取り除かれます。
ピーベリーは普通のコーヒー豆よりも高めの値段で取引されることが多いので、コーヒー農家によっては選別の過程でピーベリーのみを集めて出荷するケースもあります。市販されている普通のコーヒー豆にも稀に紛れ込んでいることがあるので、見たことがある人もいるかもしれません。
(3)なぜピーベリーができるのか
なぜ普通は2つあるべきコーヒー豆が1つしかなくてピーベリーができるのかについて詳しくは分かっていません。異常な交配や、日照条件、降水量、土壌などいろんな要因が合わさるとできるとも言われています。
一般的に枝の先端にできることが多いですが、実際にはコーヒー豆の木の中でも果実の発育が悪い部分にできることが多いようです。発育が悪いためにコーヒーの種子のうちの1つが死んでしまって、代わりにもう1つの種子に全エネルギーが注入されるためにピーベリーができるわけです。
- 参照記事
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(4) カラコルは大きいピーベリーでカラコリーリョは小さいピーベリー
これはかなりマニアックな話なのですが、3〜5%の割合でしか生産されないレアなコーヒー豆であるピーベリーはその大きさから更に呼び方が変わります。
ピーベリーの中でもコーヒー豆粒の大きさが大きいものを「カラコル」と呼びます。コーヒー豆は一般的に大きい粒の方が等級が上がって味も美味しいことが多いです。そのためにカラコルはかなり高級なコーヒー豆として扱われます。
一方で、ピーベリーの中でもコーヒー豆粒の大きさが小さいものを「カラコリーリョ」と呼びます。ピーベリーはどうしても生産の過程で通常よりもコーヒー豆が小さくなることが多く、カラコリーリョは比較的に多く生産されます。
ピーベリーにまつわる伝説1:普通のコーヒー豆より美味しい
そんな珍しいピーベリーなのですが、珍しいがゆえにいろんな謎の伝説があります。その中でも一番よく聞くのが、ピーベリーは他のコーヒー豆よりも美味しいというものです。
ピーベリーは形が丸いので、焙煎で火が平等に通りやすいと言われています。丸くてコロコロと転がって満遍なく焙煎できるというわけです。また、本来ならば2つあるべき種子が1つしかないので、栄養分がその1つに集中して凝縮され味が変化するとも言われています。
具体的には、焙煎の過程で火が通りやすいことと、栄養分が凝縮されていることで、ピーベリーで作られたコーヒーはより味が柔らかくなり、甘みが出ると言われています。
果たしてこれが本当なのか証明されているわけではないのですが、実際にはピーベリーも普通のコーヒー豆も味はほとんど変わらないです。たとえ1粒のみのコーヒー豆で会っても、もともとの成分は全く同じであり、味に変化が出るほどではありません。
しかし、心理的な影響はある程度あると思うので、かなりレアなピーベリーを飲んでいると考えることで、気分的に優雅になり、それが美味しいコーヒーを飲んでいると錯覚させることもあると思います。
- 参照記事
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ピーベリーにまつわる伝説1:タンザニアでしか採れない
もう1つよく聞くピーベリーの伝説に、ピーベリーはタンザニアでしか採れないというものがありますが、これも間違いです。タンザニアは世界的にも有名なコーヒー豆の生産地です。
伝統的にタンザニアのコーヒー豆の中でもピーベリーが欲しいというニーズが強く、世界的にもピーベリーを多く輸出しているので、タンザニアでしかピーベリーは採れないのではないかという噂が広がっています。
しかし、実際にはピーベリーはどの産地のどの品種のコーヒー豆の木からもある程度の割合で発見されています。ですので、決してピーベリーはタンザニア産のコーヒー豆からしか採れないというわけではありません。
今回はピーベリーについて見てきましたが、理屈は抜きにして、珍しいピーベリーのみで作られたコーヒーを一回は飲みたいと思う人も多いと思います。ひとことにコーヒーと言ってもいろんな種類のコーヒーがあって面白いなと個人的には思います。