「スペシャリティーコーヒー」をご存知でしょうか。これ、実はコーヒー豆の種類でも、ブレンドのネーミングでもありません。
(スペシャル=特別)という意味のままに、上級のコーヒーであること、またそのためのコーヒー豆であることなどが挙げられています。またそれ以外にも様々な意味合いを持っていますね。
では、世界中で愛されるコーヒー、その中で「特別である」という定義は一体どういうことなのでしょうか。
日本におけるスペシャリティーコーヒーとは
日本にはSCAJ(Specialty coffee association of Japan)という団体があり、国内における「スペシャリティーコーヒー」の定義を決めています。
SCAJが定めるスペシャリティーコーヒーとは、「消費者が美味しいと感じるコーヒーであること」が第一。本当に基本中の基本ですね。
豆においては「生産国の栽培環境」から「収穫」「品質管理」に至るまで徹底されており、「欠点豆の限りなく少ない豆」であること。
そして最後、カップや器具などもクオリティの高い物であることなどが条件となっています。
これらをまとめると、7つの項目に分けられ、
1.カップクオリティ…汚れなどによって、コーヒーの香り、色、味を邪魔しないものであること。
2.甘さ…コーヒーチェリー収穫の段階で、熟度が良く、甘味があること。糖度ではなく、苦味、酸味、渋みなどとの比較で感じられるもの。
3.酸味の特徴…明るく爽やかであるか。良質の酸味は、飲んだ際に生き生きとした印象を与えられるもの。
4.質感…口に入れた際の、重さ、濃さ、粘り気、密度が評価できるか。
5.風味の特性…味覚と嗅覚の組み合わせによる、最重要項目。またコーヒー豆の栽培から収穫、焙煎から抽出までの技術力に影響される。
6.後味…コーヒーの後味が、甘味であるかどうか。品質が悪いと後味に刺激的な感覚がある。
7.バランス…風味の調和が取れているか、足りないものは、突出しているものは。
これらの基準を全て満たして、美味しいコーヒーが「スペシャリティーコーヒー」なのです。
当り前のようですが、とても難しいことですよね。
SCAJが携わるコーヒーの各種競技会
またSCAJは、コーヒーの競技会も多く開催しています。最も基本的な「ハンドドリップ」に始まり、「サイフォン」「エスプレッソ」など多岐に渡ります。
「ジャパン・ハンドドリップ・チャンピオンシップ」…いわゆる純喫茶のコーヒーの淹れ方、ですね。ポットから豆にぐるぐるとお湯を落とし、抽出する昔ながらのコーヒー製法です。この方式は老若男女問わず参加者の集うジャンルのようです。

出典:http://www.scaj.org/
「ジャパン・サイフォニスト・チャンピオンシップ」…サイフォンコーヒーは、器具の様相や大掛かりなセットからそのパフォーマンス性に注目が集まりますが、手順を守るととても安定して美味しく淹れられる製法です。現在ではドリップやエスプレッソばかりになってしまいましたが、昔ながらの喫茶に行けば見られることもあるようです。

出典:http://www.scaj.org/
これらの他にSCAJでは「ラテアート」「カップテイスト」「コーヒーロースト」などの競技会も開催しています。スペシャリティーコーヒーの定義に「カップ」や「豆の品質」なども挙げられているので、これらの技術も少なからず必要なのだといえますね。
近年でいうと「バリスタ」という言葉がよく聞かれますが、こちらはイタリア語で、エスプレッソなどを淹れる技術者(店員)のことを指します。また日本にも「バリスタ協会」があり、SCAJとの共催でバリスタの大会を開いています。
海外におけるスペシャリティーコーヒーの定義
日本でのスペシャリティーコーヒーはその名の通りSCAJが定めていますが、この正式名称は「Specialty coffee association of Japan=日本スペシャリティーコーヒー協会」です。日本における団体なのですね。
SCAJは設立が1987年、当時の名称は「全日本グルメコーヒー協会」でした。
そこから数年前、1982年アメリカではSCAA「Specialty coffee association of America」が発足されています。日本向けに活動している団体ではないのであまり知られていないですが、アメリカ国内で、日本でのSCAJと同じように定義や大会、また各種イベントなどを通じてコーヒーを広く薦めています。
またヨーロッパにはSCAE(Specialty coffee association of Europe)があり、同様の活動を行っています。
世界一のバリスタを決める「WBC」
スペシャリティーコーヒーの定義が何なのかは、わかりました。では本当に「特別なコーヒー」とは何なのか。
昨今「バリスタ」という用語がコーヒーの業界では主流とされていることは先に述べましたが、この用語が日本でもここまで浸透したのは「スターバックス」の影響であることはほぼ確実でしょう。
SCAJもバリスタの日本チャンピオンを決める大会を開催しています。そしてこの大会での優勝者は、「World Barista championship」(WBC)に日本代表として参加します。日本人でも2014年に井崎英典さんがアジア初のチャンピオンになり、話題になりましたね。
ちなみに井崎さんは現在、マクドナルドのコーヒー商品の監修をはじめ、国内外でバリスタとして様々に活動を続けています。
定義としては安易かもしれませんが…井崎さんの淹れるコーヒーが(日本人による)最高にスペシャルなコーヒーともいえるでしょう。
コーヒーの美味しさは「豆」ですでに決まっている?!
コーヒーはまず、趣向品のひとつです。ですから実はコーヒーに携わる団体はすべて非営利団体であり、また資格なども非常に多くありますが現在その全ては民間資格(特定の団体が設立、認定した資格)です。調理師免許は国に定められたいわゆる"国家資格"ですから、実のところ曖昧であるといわれて仕方がないものなのですね。
そして一つ、コーヒーについて意外と知られていないことがあります。
コーヒーは「豆の鮮度で8割方決まっている」ということ。これはある老舗喫茶店のマスターが語ったことです。
世界でしのぎを削って行われる技術大会それらは、コーヒーの「2割の美味しさ」をいかに引き出せるかという勝負なのです。ほぼ大半は届いた豆がすでに担っています。ようするに栽培、収穫、焙煎の段階で決まってしまうのですね。
とんでもない話のようですが、事実。それほどでもなさそうなカフェのおじさんがサササッと淹れたコーヒーが驚くほど美味しかった時、豆が相当良いものです、と言って良いかもしれません。
私の地元でも、チェーンのコーヒーショップが立ち並んでいましたが、古いビルに入っている小さな喫茶のおじいさんがハンドドリップで淹れたコーヒーの味と香りを越えるものはありませんでした。
コーヒーは現在とても手軽で身近な飲み物ですが、コーヒーショップで出しているもの(マシンで抽出しているもの)、またボトルや缶で売られているもの、これらと手作業で淹れたコーヒーは全く別物です。
豆の鮮度で8割は決まっていると豪語したマスターは、ある意味で本当にスペシャルなコーヒーとは何かを知った数少ない人なのかもしれませんね。